Koji Tamaki Premium Symphonic Concert (2015年5月)

Hさん

先ほど聞いてきました。まず、とてもいい席で、大感激です。斜め前には安全地帯のメンバーたちが座っており、休憩時間はひっきりなしにファンが訪れて握手を求めてくるので、そのそばでお地蔵さん状態でしたが(笑)。お師匠さまに日比野が深くお礼を申していたとお伝えください。

玉置浩二の歌は、もちろん大変レベルが高いので、その先の話になるのですが、不満ももち、感心もしました。

最初にお断りしておかなくてはいけないのは、私がベストだと考えている玉置浩二は八〇年代のものだということです。数ある名曲のなかで、私がもっとも好きなのは「キ・ツ・イ」であり、それほどファンの間で人気があるわけではないこの曲が好きだということはとりもなおさず、私が「技巧派」好きで、難易度の高い曲を軽々と歌うときの玉置が好きだということがおわかりだと思います(笑)。

九十年代半ばぐらいから私は玉置の歌を聴かなくなりました。一般的にどう言われているか余り知らないのですが、私の耳には彼は自己模倣をしているだけで、どんどんスケールが小さくなり、つまらなくなっているように聞こえていました。

この十年ぐらいで玉置が「復活」していると感じるようになりました。かつての勢いは失われて戻ってこないけれど、年をとって味が出てきた、という何人かのヴォーカリストにある道筋を辿っているのだろうと漠然と予想していました。

そういう認識のもとで今日のコンサートに行かせていただいたわけです。

今日はベストではなかったはずです。声を張らずにマイクを近づけてささやく(昔でいうところのクルーナー唱法)のときも何ともいえない艶があるのが玉置の昔から変わらない特徴ですが、今日は今一つ艶がありませんでした。

もちろんそれだからといって試合を投げるようなことはしていません。しかし代わりに今日玉置は神経質なまでに自分の声をコントロールしながら歌っていました。もしかするとクラシックのオーケストラをバックに従えるといつもより神経質になる、ということもあるかもしれません。しかし私が好きな、クルーナー唱法から声を張り上げるモードへの「無意識のスイッチ」が今日は殆どありませんでした。スイッチするときは慎重に、計算してスイッチしていました。ノリとか破天荒さのようなものが消えていました。

やはり、玉置の歌は安全地帯のバンドの演奏にもっとも合っている、と感じました。クラシックのオーケストラは自分と同じだけの反射神経の鋭さを持っていない、ということを玉置はわかっており、その鈍さに合わせて自分も鈍くしているように思えました。

その一方で、アンコールで「夏の終わりのハーモニー」を半分アカペラで歌ったことに集約される玉置の率直さに心を打たれました。音響もそういう作り方をしていたと思うのですが、上記で指摘したような年を取ったゆえの「アラ」を、隠すのではなく、ありのまま出してそれを聞いてもらおう、という態度に潔さと自信を感じました。ああ、この人は歌がうまいだけではなく耳がよいだけに、色々悩んでいたのだろうが、もう開き直っているんだな、ということがよくわかる舞台でした。

というわけで、最後は泣いてしまいました。歌のうまさで評価していたはずですが、玉置の歌のうまさは記憶のなかで美化されたものを下回っており、しかしパフォーマーとしての玉置にあらためて惚れた、というところでしょうか。

あと東京文化会館の音はやはり好きではありません。全体に平板に聞こえ、音が溶け合うことも、個々の音が粒立つこともない中途半端な音響のように聞こえます。ひょっとしたらアレンジのせいかな、とも思いましたが(オーケストレーションは可もなく不可もなく、優秀だけど才能はない人のものだな、と感じました)、ブラームスの舞曲を第二部の最初でやったときも平板さは変わらなかったので、やはり会場のせいだと確信しました。

せっかく誘っていただいたのに、否定的言辞ばかり並べ立てているように見えるかもしれません。しかし全体としては大変楽しく、そして(何よりも重要なことに)歌や音響やステージに立つということを再考させてくれる、大変面白いものでした。Hさんに感謝していますし、今後も(できれば)懲りずにこのような機会があればお誘いください。ありがとうございました。

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