科学研究費・基盤研究(B):「日本の地域素人演劇の包括的研究」公開研究集会

日時:2019年6月22日(土)16:30-18:00
場所:成蹊大学4号館ホール(交通アクセスおよびキャンパスマップ
発表者:五島朋子(鳥取大学教授)・本橋哲也(東京経済大学教授)・中川眞(大阪市立大学教授)
ディスカッサント:長谷川宏(哲学者)
司会:日比野啓(成蹊大学教授)

入場無料・事前申込は不要です。

16:30-17:00:「超高齢社会における素人演劇の可能性:シニア演劇を事例として」五島朋子

17:00-17:30:「函館野外劇と文化的アイデンティティ」本橋哲也

17:30-18:00:「紙芝居劇団「むすび」の挑戦」中川眞

科学研究費・基盤研究(B):「日本の地域素人演劇の包括的研究」(研究代表者:小田中章浩)では、ヘーゲルの研究・翻訳で名高い長谷川宏さんをディスカッサントに迎え、演劇研究者のみならず地域市民演劇や社会包摂型アートに関心のある全ての方を対象に公開研究集会を実施します。


戦後、燎原の火のごとく広がったアマチュア演劇運動は、その主張や実践形態において戦前の素人演劇運動と多くの共通点を持ちながら、その左翼主義的傾向ゆえに先行運動と袂を分かち、左翼運動が退潮する1970年代においてほぼ終息しました。だが80年代以降も演劇作品の上演に取り組む非専門家たちの集団は存続し、地域で活発な活動を続けています。とりわけ、90年前後からの地方創生の機運に乗り、地域住民の関心の多様化、社会における階層格差の固定化、高齢化といったさまざまな要因を反映した「新しい」地域市民演劇を見ていくと、演劇という制度についての再考すら迫られるような、きわめてユニークでラジカルな試みがなされていることがわかります。

2017年に開始した本プロジェクトでは、大都市圏でプロが上演する演劇と似ているようで異なるそうした「演劇」と社会との関係を、綿密な実地調査と取材にもとづいて明らかにしてきました。北は北海道札幌市から、南は沖縄県うるま市まで、ジャンルもミュージカル・宝塚ふうレヴュー・里神楽・新劇・小劇場と多彩にわたる地域市民演劇についての調査研究の成果の一部をプロジェクトに属する三人の研究者が発表します。

当日は同じ会場で13時より、山本良子映画監督が撮った『僕らのハムレットができるまで』が上映されます。長谷川さんがはじめた小中学生対象の学習塾・赤門塾で毎年3月に行われる演劇祭についてのこのドキュメンタリー映画を鑑賞した後、関係者による座談会が開催されます。詳しくはこちらをご覧ください。

30分の休憩後、16:30より公開研究集会を実施します。各発表者による約20分の発表に続いて、長谷川さんからの質問に答えるかたちで、議論を行い理解を深めていきます。

「超高齢社会における素人演劇の可能性:シニア演劇を事例として」五島朋子

人生100年時代という未曾有の高齢社会を迎える中、「老い」とどのように向きあっていけば良いのか、演劇活動を通じて答えを模索する人たちがいます。中高年になってから本格的に演劇を始め、年に1度の上演に情熱を注ぐアマチュアたち、高齢者と新たな演劇表現を探ろうとする演出家やプロの俳優もいます。本発表では、日本におけるシニア演劇の隆盛ぶりを概観しながら、幾つかの具体例を取り上げ、超高齢社会における演劇の可能性を考えてみたいと思います。

ごとう・ともこ。専門はアートマネジメント。大学卒業後、10年間自治体の建築技術職員として勤務したのち、1998年年九州芸術工科大(現九州大学)大学院博士後期課程に進学。2001年満期退学。博士課程在籍中より、舞台制作や文化によるまちづくり市民活動に参画。2005年鳥取大学地域学部附属芸術文化センター専任講師として着任し、現在に至る。地域における劇場の役割の多様性、社会的な課題に積極的に取り組む劇場や演劇活動に関する調査研究を行っている。


「函館野外劇と文化的アイデンティティ」本橋哲也

日本全国の様々な地域で行われている市民主導のミュージカル上演には、様々な類型があるが、ほとんどの場合、最近の地域共同体における靭帯の経済的社会的衰退を背景として、新たに文化的アイデンティティを構築しようとする姿勢が顕著に見られる。本発表では、毎年夏に行われている「函館野外劇」を題材として、地域演劇と地域の歴史的・文化的アイデンティティの関係を考えたい。

もとはし・てつや。1955年生まれ。英国ヨーク大学大学院博士課程修了。D.Phil(文学博士)。東京都立大学を経て、現在、東京経済大学コミュニケーション学部教授。著書に『ポストコロニアリズム』(岩波新書)、『思想としてのシェイクスピア』(河出書房新社)、『本当のゲド戦記』(大修館書店)、『境界の身体』(青弓社)、『ディズニー・プリンセスのゆくえ』(ナカニシヤ出版)、『宮城聰の演劇世界』(塚本知佳との共著、青弓社)など。


「紙芝居劇団「むすび」の挑戦」中川眞

日本最大の寄せ場である大阪市西成区(通称)釜ヶ崎で、2005年に紙芝居劇団「むすび」が結成された。メンバーの多くは生活保護受給者で、元ホームレスの方も含まれている。家族との縁を断ち切って釜ヶ崎で働くも、やがて高齢化を迎える。孤独死やアルコール中毒などの問題が多発する街のなかで、「むすび」は小さな集団だが、コミュニティにとって大きな意味を持ち始める。そのプロセスを追う。

なかがわ・しん。アーツマネジメント、サウンドスケープ、サウンドアート、東南アジアの音楽を専門領域とする。著書に『平安京 音の宇宙』(平凡社)、『アートの力』(和泉書房)、『サウンドアートのトポス』(昭和堂)、『サワサワ』(求龍堂:小説)など。サントリー学芸賞、京都音楽賞、小泉文夫音楽賞、京都府文化賞、インドネシア共和国外務省功労賞、日本都市計画家協会賞特別賞など受賞。大阪市立大学都市研究プラザ特任教授。

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