合衆国における「労働」の文化表象:2013年度第1回研究会のお知らせ

成蹊大学アジア太平洋研究センター・共同研究プロジェクト:合衆国における『労働』の文化表象(プロジェクトリーダー:下河辺美知子、研究分担者:日比野啓・権田健二・岡田泰平)では、講師に新田啓子(立教大学)氏を迎え、2013年度第1回研究会を以下の要領で実施します。

日時 2013年6月25日(火)16:30〜18:30(時間は予定)場所 成蹊大学10号館2階第二中会議室

“Modern Domestic de race”――家内労働と生の境界

 「労働」とは、一義的には「生産活動」のことである。人間を「労働する動物」と規定したマルクスは、こう述べている。「動物はたんに直接的な肉体的欲求に支配されて生産するだけであるが、他方、人間そのものは肉体的欲求から自由に生産し、しかも肉体的欲求からの自由のなかではじめて真に生産する」。人間にとっての労働とは、つまり、生命維持のために必要を迫られた消費材の生産に留まらず、自己創発的で、自由な活動だというのである。自己発現という本来の価値を失った労働が、疎外という問題として立ち上がるのは、こうした文脈に他ならない。 私有財産が少数者のもとに蓄積され、労働が非対称的に商品化される資本主義体制への批判意識は、19世紀以降、多くのアメリカ作家たちにも共有され、疎外された労働者は、さまざまに表象されてきた。しかし後年、このパラダイムから、主婦の家事労働が抜け落ちていることが指摘されねばならなかったように、「家内労働」という特殊な形態は、自由と疎外に極限化され得ぬ労働の多義性を示しているように思われる。 本発表では、ハウスメイド、執事、女家庭教師など、さまざまな家内労働者を描いたHenry Jamesを中心とした小説家たちの作品を見ながら、一つの家族に濃密に係わり、なにがしかの親密性を分け持つ他者に託された「生の境界」を明らかにすることを目指したい。そのうえで、そうした文学表象をめぐる歴史的必然性や、「ケア労働」という現代的問題との連関性をも考察できれば幸いである。

テキストは

Henry James, What Maisie Knew,  The Turn of the Screw, and “Brooksmith”
カール・マルクス『経済学・哲学草稿』

を主として扱う。Dame Daphne du Maurier, Rebecca, Scott Fitzgerald, The Great Gatsby, Gertrude Stein, The Autobiography of Alice B. Toklas そしてThorstein Veblen, The Theory of the Leisure Class などについても言及するかもしれない。

新田啓子

立教大学文学部英米文学専修教授。専門は、19・20世紀アメリカ小説(モダニズム中心)、文化理論(人種・ジェンダー中心)。著書に『アメリカ文学のカルトグラフィ――批評による認知地図の試み』(研究社 2012年)、編著書に『ジェンダー研究の現在――性という多面体』(立教大学出版会 2013年)、訳書にトリーシャ・ローズ著『ブラック・ノイズ』(みすず書房 2009年)など。

 

 

 

どなたにも無料でご参加いただけますが、会場整理の都合上、開催日前日までにhibinoあっとまーくfh.seikei.ac.jpにお名前と(あれば)ご所属をお書きのうえ、お越しの旨をお知らせ下さい。